有馬ナビ
有馬の昔話有馬温泉の桃源洞町に古くから伝わる民話をご紹介します。
まだ、有馬温泉が「摂津国の湯山」と呼ばれていた頃のお話です。湯山には、温泉を湯治場として病気を治す目的のお客さんが大勢来ておりました。また、病気を治す仏様として薬師堂にお参りに来るお客さんも来ておりました。
桃源洞は、大谷川(現在の有馬川)の上流にあって、そこには大きな岩や石がゴロゴロとした広い河原と山林がありました。そのため、三田街道は、現在よりも ずっと山側に高巻き、つまり高いところを通って湯山入りしていました。栄町にある宝塔から先が湯山、つまり有馬温泉になり、この高巻き道が湯山に入る最後 の峠でした。この峠には小さなお堂がありましたが、この当時のお堂は、旅人が道しるべとしたり、休んだり、雨宿りしたりするための小屋で、仏様やお地蔵様 などをお祀りしていました。
このお堂に、おとくという身寄りのない小母さんが住み、一人暮らしをしておりました。
ふだんは、宿屋でお客さんの食事の材料とする山菜摘みをしておりました。おとくさんは、いつもお客さんに体の調子を尋ねてから山菜を摘みに行き、それを食べてもらいました。
すると、湯治と山菜料理でお客さんの病気がどんどん回復していきました。うわさが広まって、この宿屋には丹波、京、大阪など各地からお客さんが大勢やって来るようになり、大繁盛しました。
ある日、丹後から女の子と母親の二人連れというお客さんがやってきました。話を聞いてみる と、一家四人が揃って手足がしびれ、痛みが激しくて毎日苦しんでいるが、お金が十分ないので、とりあえず娘と二人だけで来た。治れば、もっと働いて家にい る旦那と息子も連れて来たいと言いました。おとくさんは、直ぐに山菜摘みに行き、食べてもらい、湯治もさせましたが、一向に治りませんでした。母娘は、日 毎に弱っていきました。そして、お金がもう無くなったので明日帰りますと言って布団の上に横たわったままで泣くのです。
おとくさんは、どんな病気にもよく効くという木の実を知っていました。その木は、おとくさんが住んでいるお堂の上の方にある、こんぶ滝の直ぐそばに生えていました。
しかし、この木の実は、その辺りに住む狼の大好物だったので、これまでは、狼の仕返しを恐れて絶対にこの実だけは摘んだりしませんでした。しかし、日毎に弱っていく母娘の様子を見ていて、可哀想に思い、ついに木の実を摘みに行く決心をしました。
こんぶ滝に行ってみると、万病に効くという木の実がなっていました。狼の食べる分を残して、母娘二人分の木の実を持って、帰り支度を始めました。その時に、ふと丹後で苦しんでいるという旦那さんと息子さんの姿を思い浮かべて、思わず狼の食べる分まで摘んでしまいました。
宿屋に帰って母娘に食べさせると、見る見るうちに熱が下がり、痛みが取れて痺れもなくなりました。そこで、家で待っている旦那さんと息子さんのために取ってきた木の実をおみやげに差し上げました。
やがて、すっかり元気になった母娘は峠の下あたりまで何度も振り返って頭を下げ、お礼を言い、丹後に帰っていきました。おとくさんも、その母娘の姿を見て大変喜びました。
それからは、湯山の他の宿屋も毎日お客さんのためにいい食材を探しに山菜摘みに行き、料理にもいろいろと工夫したので、ますます湯山の町が栄えました。
それから何日かがすぎました。おとくさんがズッと姿を見せないので、心配した宿屋の主人がお堂まで探しに行きました。しかし、お堂の中はひどく荒らされて いて、おとくさんの姿がありませんでした。そこで、近所に住む人々が総出で山や谷を毎日探し歩きましたが、おとくさんは見つかりませんでした。数日たっ て、山奥にある十八丁谷でおとくさんの着物をくわえた狼を見かけたという人が現れました。人々は、それを聞いて大そう悲しみました。そして、おとくさんの ために、皆でお堂の前に立派なお墓を立てました。
それから一年ほど経って、丹後から病気の治った家族が四人そろって、丹後ちりめんの着物を 持って、おとくさんにお礼にやって来ました。しかし、おとくさんの哀れな最後を宿屋の主人から聞いて、とても驚き悲しみました。そこで、おとくさんを偲ん で、お堂の中に石佛を安置して丹後ちりめんを着せました。それからも、その仏様には、毎年新しい丹後ちりめんが着せられていたそうです。そして、おとくさ んは湯山の宿屋で働く人たちのお手本となり、その命日には絶えることなく花が供えられていました。
今は地名として、桃源堂(峠堂)、こんぶ滝(旧幼稚園の北側)、おとくら谷、おとくら橋などが残っています。
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