武蔵坊弁慶は古くから豪傑の代表として一般庶民にまで人気があり、彼の名に因んだ諺も沢山あります。
義経が兄の頼朝に追われて、奥州の藤原秀衡の庇護を求めますが、間もなく病没し、その息子の泰衡に裏切られます。義経主従が宿舎としていた衣川の館を攻められた際に、弁慶が群がってくる敵兵を次々と倒すが、ついには無数の矢を全身に浴びて、大薙刀(なぎなた)を杖にして仁王立ちのままで息絶えた、つまり「立ち往生した」と伝えられています。このことから、ものごとが行き詰まって、進退窮まり、処置のしようがないことの喩えとして使われるようになりました。
なお、この立ち往生については法医学的な見地から議論があり、著しい肉体疲労時に矢が刺さり、即死した際のショックからくる即時性死後硬直ではないかという意見もありますが、真偽は不明です。
向こう脛には神経が集まり、非常に痛みを強く感じる急所なので、弁慶のような豪傑でもここを打たれたら、痛くて涙を流すだろうということから、急所の代名詞として用いられます。なお、これに似た急所の代名詞として「アキレス腱」があります。ギリシャ神話の不死身の英雄、アキレウスの唯一の弱点が踵の筋であったところから、これを知ったパリスに野で射られて殺されます。
弁慶が戦さの際に持参したという武器で、のこぎり、大槌、斧、薙刀、鎌、熊手、太刀の7種類であると伝えられています。そこから、仕事に必要な装備一式を「七つ道具」と呼ぶようになりました。現在でも、ニュース報道では、「選挙の七つ道具(たすき、腕章、鉢巻など)の準備が整った」というように言います。
家の中では威張っているが、外に出ると意気地がなく、大人しい人間のことを指して、こう呼びます。通常、短くして「内弁慶」と言います。引きこもりタイプの子供が家庭内暴力というニュースなど芳しくない場合によく使われます。最近では、ネット上でのみ威勢がいい人間のことを「ネット弁慶」と呼ぶこともあります。
「弁慶が薙刀を持って刺し殺した」という文を「弁慶がな、ぎなたを持ってさ、し殺した」と区切り(読点)を間違えて読むことをこう呼びます。
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