むかしむかし、神戸の海辺近くの魚屋さんは毎朝とれたての魚を六甲山を越えて有馬温泉まで運んでいました。この山道を魚屋道(ととやみち)と言います。
ある日、この魚屋道を若い魚屋さんが通っていました。動物好きの魚屋さんは山の中にお腹の空いた山犬がいると思い、ときどき余った魚を投げていました。「そうれ、魚だぞー!おいしい魚だぞー!」
有馬温泉からの帰りが遅くなったある日のこと、六甲の山道をとぼとぼと歩いて帰る魚屋さんの前に一匹の大きな山犬が現れました。「あっ!狼だ!」あわてて逃げる魚屋さんの着物の袖を山犬は力いっぱい引っ張ります。
「ひぇ〜!助けてくれ〜!」
魚屋さんは大きな岩陰に引っ張り込まれました。
その時、ガサガサと大きな音がして狼の群れが山道を通り過ぎていきました。「そうか、魚のお礼に助けてくれたんだな!」この後も、魚屋さんは魚が余ると山犬に魚を分けてあげました。
今では、魚屋道はハイキングコースとして多くの人に親しまれています。 |
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